いじめが脳に与える影響とは?思春期から成人初期までの脳の変化を解明する最新研究
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いじめが脳に与える影響について、思春期から成人初期に至るまでの脳の発達を追跡した最新の研究が、注目されています。この研究は、いじめを経験した若者の脳が、どのように変化するかを詳しく解明し、感情面や行動面の問題に直結する神経生物学的メカニズムを明らかにしました。
研究概要:構造的MRIで追跡された脳の変化
この研究は、構造的MRI(磁気共鳴画像法)を用いて、約2000人の若者の脳を長期にわたり追跡したものです。思春期から成人初期にかけて、いじめ経験が脳の特定の領域に及ぼす影響を調査しました。
研究では、いじめを経験した被験者の脳内で次のような変化が見られました。
- 大脳基底核の体積増加:尾状核、被殻、側坐核、扁桃体、海馬など、感情処理や報酬に関連する部位で体積の増加が確認されました。
- 小脳、内嗅皮質、島皮質の体積減少:小脳は運動機能や認知機能、内嗅皮質と島皮質は感情や自己認識に関与する部位で、いじめ被害によってこれらの領域が萎縮する傾向が見られました。
これらの変化は、感情的および行動的な困難さの背景に、いじめがどのように影響を与えているかを示唆しています。
性別による影響の違い
また、この研究は性別による脳の変化の違いにも焦点を当てています。女性では感情処理に関連する脳の領域で大きな変化が見られ、男性では運動や感覚に関わる領域での変化が多く確認されました。この発見から、いじめ被害の影響が性別ごとに異なることが分かり、いじめ被害への対応には性別に配慮したアプローチが求められることが示されています。
いじめが脳に与える影響:感情や行動の問題に繋がる神経生物学的メカニズム
この研究は、いじめ被害が脳の発達に広範囲で影響を与えることを示しており、感情的および行動的な問題が脳の発達段階でどのように生じるかについての新たな理解を提供しています。いじめがもたらすストレスが、脳の特定の領域を変化させ、被害者に情緒不安定や行動の困難といった症状が現れる可能性が高まります。
今後の展望:いじめ被害者支援と早期介入の重要性
この研究の知見は、いじめの影響を受けた若者への早期介入やサポートの必要性を強調しています。特に、感情や行動の問題に直面している若者に対しては、神経生物学的なアプローチと性別に配慮した支援が、より効果的である可能性があります。
いじめが脳に与える影響は、ただの精神的な問題にとどまらず、脳の発達に深刻な影響を及ぼすことが明らかになりました。この研究成果は、教育現場や家庭においていじめを防止し、被害者をサポートするための重要な一助となるでしょう。
引用: https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.09.11.611600v1